071203

知り合ったときAV女優を辞めたがってたKちゃんは、今ではれっきとした殺し屋だ。使うのは専ら青龍刀で夜道で背後からいきなり襲うのが得意技。だが最近になって私は、実はKちゃんは誰からも殺しの依頼を受けてないのらしいのを知った。どこからも頼まれもせずせっせと自主的に人の首を刎ねていたのだ。Kちゃんは殺し屋なんかでなく殺人鬼だったのだ。貧乏そうでいつもペヤングばかり食べてるから変だとは思っていたが、殺し屋って意外と儲からないのかもなー、現実ってそういうものかもねー、と納得してた。仕事もせず毎日人の首ばかり刎ねてたらそりゃあ生活だって苦しくなる。でもKちゃんが暗い顔してるところなんか見たことがない。やっぱり自分のやりたいことをやって生きてる人は、たとえ地を這うように貧しくても輝いてるよね。生き生きしてるよね。尊敬できるよね。というわけで私はKちゃんが殺し屋、じゃなくて殺人鬼を続けることに賛成だし、刎ねた首でトーテムポールつくるのを少しくらい手伝ってあげてもいいと思う。でもKちゃんは芸術家だから他人の手はあんまり借りたくないみたいだ。それが解るから私はペヤングの差し入れ以外なるべく手出しはしないし、ただKちゃんの凄さを横にいて小声で讃えるのだけが自分の役目というか友情のあかしだと思う……