2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

自己ベスト

自己評価と、他者による評価はつねに食いちがい続けるものだろう。 これまで私の書いた八百字小説で自己評価が一番高いのは、今年の怪談大賞に出した中の一本「私の未来」である。私は怪談に、そこに何も書かれていないものの重量を静かにつたえる語りの軋み…

怪談とリアリティ

ビーケーワン怪談大賞の結果が出る。 http://blog.bk1.jp/kaidan/ 私の書いた「百合」も佳作に入っていた。 選考会レポートの中で、福澤徹三氏が怪談を取材する重要さを語っていた。私自身は取材をしないのであれだけど、怪談書く人はたとえ小説でも取材はし…

画面は誰かの鼻の穴

最近読んだ本。 『赤いヤッケの男』安曇潤平 『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』あせごのまん 『懲戒の部屋 自選ホラー傑作集1』筒井康隆 『人造人間キカイダー』(1)〜(4) 石ノ森章太郎 オリンピックを全然見てないのはテレビを見ないからで、ほ…

紙に書いた物語、の自由

物語が現実にある家だとすれば、私が必要としているのは家の間取り図だけだ。かつてそこにいたことのある、或いはいつかそこに行くことになるかもしれない家の間取り図。そのようなものとしての物語にしか本当のところは関心が持てない。私が“掌編しか書けな…

意志のように不調

読んだ本。 『プロレスへの遺言状』ユセフ・トルコ 『真・都市伝説』呪みちる他 『コリドラー〜廊下者〜』(1)(2) サガノヘルマー 『ゲゲゲの鬼太郎〜地獄流し』水木しげる 『映画監督に著作権はない』フリッツ・ラング 『ゴダール革命』蓮實重彦 ○ ●機械は正…

透明さについて

三十代の十年間がひどく見通しのいい空白だったという印象を書いたが、この期間は私が学生や職業人としての所属をもたなかった初めての十年間(正確には二十七からの十三年)であり、またそれにともなう経済的困窮と膨大な退屈を埋め合わせるにふさわしい手…

不惑

今日から四十代である。びっくりだ。 三十代の十年はほとんど十年の体をなしてないというか、こんなものが十年なら、その七倍か八倍生きたところで小学生のけつに毛が生える程度のことしか起きないと思う。 それくらい軽くすることに腐心してきたから乗り切…