短歌
短歌はぜんぶちょっとまえに寺山修司(「田園に死す」のという設定)の「なりきり」でつくってみたもの。がんばった痕はみえるとおもう。
未だわれを産まざりし母老い続けみづからの死に間に合はぬ 産 独身の父聴きしてふレコードの溝ほどかれて途となるらむ ポケットに死蝶集めし少女ゆゑ亡き姉に似ゆうすき眉毛の 墓場村字ものぐるひ夏たけて故郷捨てたる者らみな病む あかつきの鉄路にわれを捨…
まるまってしまう昆虫 図書券と交換できる花をつむとき
穂村弘『短歌という爆弾』は、短歌が誰にでもつくれるという身も蓋もない事実をあざやかに暴露しながら、誰もが短歌をつくれるようになってしまう世界、に対する悪意ある表情を欠くという点で罪深い本である。こんなみごとなマニュアルが書けてしまう才能は…
題詠マラソン2004 、5/24までの投稿分。()内はお題。 うたかたの矛盾レコードくるくると沈む時計がひどくあかるい (059:矛盾) とかげ園閉鎖の報はとどかない線路が袖に絡みつくから (060:とかげ) 出鱈目に積み木かさねた階段をいま、高台からまちを、…
題詠マラソン2004 、5/15までの投稿分。()内はお題。 生き物のいない星では出血が稀れだから包帯が足りなくて (041:血) やり投げの槍で撃ち落とされたときぼくらは夏の映画を観てた (042:映画) そこだけが濃くなってゆく暗闇を指で押す スイッチとは知…
さっき並べたような大半の歌は、日によってまあまあいい出来のように見えて嬉しくなったり、ひどくつまらなく見えてがっかりしたりする。つまりこちらの気分とか体調が簡単に反映してしまうくらい希薄で、弱くて、受け身なつくりなのである。存在のでっぱり…
題詠マラソン2004 、4/20までの投稿分。()内はお題。 やや低くとどまる月に鳥肌が浮いて再入力のパスワード (031:肌) 百つぶの眠り薬のねむたさでバナナ・ボートが眉毛をはこぶ (032:薬) ひさしぶりの真夜中だから握手する半分砂にほどけた腕と (033:…
何かが決定的にまちがっているような気は、つねにしている。短歌をつくるというより一見短歌のようではあるもの、それも短歌のふりをして短歌にいやらしく媚びているものをつくっているという気はするのだが、では、これぞ短歌そのものだという堂々たるりっ…
オムレツに包んだものの詳細を書いた手紙が届く食後に
題詠マラソン2004 、3/27までの投稿分。()内はお題。 投げるのはやめて積んでることにした蜜柑の山が早晩おそう (015:蜜柑) 気がつけば乱暴者に慣れていく ひたいから血をたらして照れる (016:乱) めずらしい免許のせいで地球から追われる夢をみた千回…
参加中の題詠マラソン2004 、3/14までの投稿分。()内はお題。 いま地球空洞説を支持するともれなくひび割れるくすり瓶 (01:空) 多い日も安心してる うたた寝にひろがっていくお墓でねむる (002:安心) ふかづめを運ぶ線路がくつしたの穴から穴 たそがれ…
生まれる前から死にたかった人をとうとう、展望室で見送るきみたち。 階段が盗まれた家ぬすまれたかいだんがあるいえ草原
床にひろがる水がとびあがってコップの中に吸い込まれる、ひとびとがみな後ろ向きに雑踏をせわしく行き交う、そんな逆回転の投影のなかでただひとり、正しく水を床にこぼし、まっすぐ前を向いて街を歩くことのできる者がいたとすれば、彼こそが死者である。 …
おなじ日にうまれた人がなつかしい そのうすいからだノックしているそのうすいからだノックするどこからかノックする夜毎とじられるドアもう読むとこがない新聞をさみしくて火をつけたところまではよかった
春一番だったと知ればとめどなく眠くなる昼きみは留守がち
日陰から帰ったばかり遠い目をしなくても遠い緑がしみる
無人島にぼくらがいけばそこは有人島。かわりにぼくらのいなくなった島が無人島になり、そうして世界はいつまでもどこかが夜だから。 殺される夢を見ながら殺されてしまったような 常夏の穴
蛇の目をみているうちに眠くなる線路は北へ南をはこび
こめかみにはえたきのこをむしりあい又むしりあいすこし痩せたね
本日、少女スペシャルにつき。 歯車にからみつく髪 歯車の体操少女惨殺フィギア 女子高生バラバラ肢体大会のわたしの恋は薔薇色の穴 薔薇色の穴世界から悲しみの尽きぬあなたを裏声で呼ぶ
五月雨のゴーストタウンに似たものがひろがるあなたと落ちた眠りに
電話番号のケタ数ばかり増える未来へ、なにをほしがる? あの夏の痴漢をのせて終バスは終点を過ぎさざめく銀河
プロバイダが全国共通アクセス番号にするというので、テレホが使えなくなるというので、さあどうしたものか。 好きと言う 嫌いと言う また好きと言う エーデルワイス放火楽団
照らせ、出口以外のすべてを。 はらわたのジオラマ螺旋階段を母から祖母へ!曾祖母へ!(つづく)
すべての警察官がゴム人形である世界にある日いく、この黄色いとっくりのセーターくぐりぬけて。 「死後さばきに」ふと逢いたくて逢いたくて夜の電話に出ない土建屋
穂村弘の短歌は、ある時代のある文化的な風景の記憶を喚起する。 それはいつかどこかで見た光景、聞いた会話のなつかしさに充ちている。 文化的な記憶の断片を(これみよがしな引用ではなく、微妙に紋切り型と ふれあった印象的なフレーズの集積として)一首…
やっぱり短歌じゃダメなのかなあうーんうーん、という悩ましい気分には周期的になるのだが、今はそういう悩ましい時期にあたってるような気も薄々するのだが、昨日の日付の短歌なんかはけっこうじつは肩に力はいってて、肩ガチガチな感じを自分である程度ま…
世界の終りってこんなはずじゃない! (その声は草木のざわつきにのまれて響かず) 曇天にひときわしろい教室であなたのイスは電気椅子 冬
このひろいあたまいっぱい、なんにもかんがえない。 人間を食べそうな犬まっしろなむく毛にふれて眠くなる道