2003-08-01から1ヶ月間の記事一覧

短歌日記

何日か前のレトロスペクティブに あたらしいかさぶたがある夜空にはぼくらのいない窓しかなくて という短歌をのせたのだが、これは下句がかなり弱かったと思う。もともとは「あたらしいかさぶたみたいな赤い星(火星)のある夜空を見ると、たくさん星が輝い…

小説ノート

小説は文章のドライブ感がすべてだ、というくらいに強く訴えておきたい。まあよっぽどおもしろいストーリーだとか、ストーリーの語りかたがものすごくうまいというならあれだけど、そうじゃないならドライブ感、ほとんどそれだけで小説の価値は決まる。ドラ…

短歌日記

潮みちる運河われわれの偽りにより行路死亡者はあるく 「行路死亡者」「行路死亡人」「行路病者」はまだまだいくらでもつかいたくてたまらないコトバである。ようするに行き倒れという意味で、意味は悲惨なはずなのに、あまり悲惨さをつたえない語感だと思う…

小説ノート

「バナナフィッシュにうってつけの日」J・D・サリンジャー(『ナイン・スーリーズ』野崎孝訳より) 中条省平『小説家になる!』で詳細な読みが示されていたのは覚えていたけど、というかその印象があったから読んでみたのだけれど、あらすじはすっかり忘れ…

夜警死に水

焼け石に水、と打とうとしたらこわい変換に。死に水を夜警がとるのか、夜警の死に水をとるのか。それともただ「夜警」が「死に水」の横にじっと立っているのかもしれない。夜中の病院で。 あるいは「夜警死に/水」という区切りで読むと、なんか自由律俳句ふ…

短歌日記(ジレンマ)

小説が書きたくてもなかなか書けない私にとって短歌は、短歌でしか書けない、短歌だから書けると思わせてくれる希望のウツワであると同時に、ほんとうに書きたいものはどうしても短歌では書けない、短歌だから書けない……というジレンマのはりついたウツワで…

短歌日記(誘拐された言葉)

箱庭は閉じている。閉じていて、この世の現実とは隔絶しているがゆえに、現実ではないどこかべつの世界とつながってしまう。別世界の覗く窓になる。 暗闇のわれに家系を問ふなかれ漬物樽の中の亡霊 寺山修司 ここにある「暗闇」も「家系」も「漬物樽」も「亡…

小説ノート

『容疑者の夜行列車』多和田葉子 を読書中。異国で夜行列車に乗る、という設定の物語を二人称で描く「定型」をもった連作短篇。オビには「長篇」とあるけどふつうこういうのは長篇とはいわないと思う。 二人称(「あなた」という呼び掛け)で語られる小説の…

短歌日記(果てある世界)

こわれたように笑う ぼくらは海辺へと誰かを迎えに来たんじゃなかった? 海が世界の果てであることはしょうがない、認めよう。もうこれ以上歩けないその先は、海。足止めくらって僕たちは口々に文句をたれた。なんだって海なんだこんなに! あっちもこっちも…

↑の短歌は

だいぶ前につくったけれどレトロスペクティブ(私が新作短歌をかたっぱしから発表してるページ)には掲載していない。 部分的にダメなところがあるので直したいとかではなく、この短歌の存在じたいに何だか許せないものが含まれているのだが、何がどう許せな…

短歌日記

「聞かないから言って」ふさいだ両耳に告げるゆうべの犯人の名を

短歌日記

私は文学作品からはあの世の声が聞こえるべきだと思う。 あの世から言葉が漏れてくる裂け目として短歌は期待できると思う。 偏頭痛ふたたび夏をひまわりの抜かれた穴点々とある道 木星の地図買うたびに木星は膨らんでるの と震える声で

短歌日記

映画版『田園に死す』 『田園に死す』は恐山の魅力を正しく文学化していた。同じように、映画『田園に死す』は歌集『田園に死す』の魅力を完全に映像化することに成功している。 歌集から九年後、寺山自身の監督したこの映画は当然のことながら、恐山の映画…

短歌日記

お金があったら歌集を買う 歌集は本屋にあまり置いていない。 だから短歌がエンターテインメントでもあり得る、という事実に人はめったに気づかない。かなりな読書好きの人でも、読書する本の選択肢に「歌集」は入ってこない。あれは国語の授業で鑑賞させら…

小説ノート

小説は書きはじめたらできるだけ一気に書き上げたい。だらだらしてると途中で考えが変わったり、考えていたことを忘れたり、最近読んだ本の影響が出てとちゅうで作風が変わるとか、いろいろあるので。

短歌日記

見なかったことに 『田園に死す』をよりどころにして短歌を考えることは、結論から物事を考えることに似てしまう。不動の結論に向かって何度考えをたどり直しても、袋小路のつきあたりっぷりを確認する意味しかない。その袋小路じたいに魅力があるという考え…

比喩の限界

「顔から火が出る」という表現がある。 なぜ顔から火など出てないのに「火が出る」と言い切ってしまってよいのか。 言い切ってしまって通用するのか。といえば、それは人が「顔から火が出る」ような場面に身を置いたとき、たしかに「顔から火が出る」ような…

短歌日記

たとえば キャンパスは跡形もなく薄日さす隕石口をわたる黄揚羽この一首。最近つくったものだがいかにも「短歌的」にまとめようとしている魂胆が見えて見苦しい。自分の知っている「短歌」(ってこういうものだったよなあ確か……という貧困なイメージ)にひた…

短歌日記

死の日よりさかさに時をきざみつつつひに今には到らぬ時計 寺山修司 めざせ秘宝館 寺山修司の歌集『田園に死す』には、「架空の青森の因習と寺山家の歴史を再現した秘宝館」とでもいうべき箱庭的世界観がある。それが短歌本来の箱庭性とぴったり一致し、ひと…

短歌日記

新人賞 第二回歌葉新人賞の候補にどうやら残れたらしい。このリアルタイム・スペース(公開選考用のBBS)で発表されているタイトルのうち、「ニセ宇宙」というのが私の作品。 自分のつくった短歌が、ウエブ歌会など「半ば義務として感想を言い合う」場以…

短歌日記

牛小舎にいま幻の会議消え青年ら消え陽の炎ゆる藁 寺山修司 私の知っている短歌の中で一番好きな短歌。 短歌という箱庭空間を劇場と化し、そこに「幻の会議」を出現させたとたんに消し去って、あとには「陽の炎ゆる藁」だけを残すあざやかで夢のような寸劇(…

短歌ノート

われら 昨日の短歌の「われら」が「ぼくら」や「かれら」であってはいけない理由が思いつかない。「ぼくら」「かれら」どちらにも欠点はありそうだが、同じくらいの欠点なら「われら」にもあると思う。 こういう場合「どれにしてもいい」とは言えなくて、「…

短歌日記

轢死したカエルの言葉ある日ふと低く聞こえる雨のオフィスに

小説ノート

小説が動く 小説を最後まで完成させるために必要なのは、書きつつある小説をつねに自分で制御できるものにしておくこと。つまり自分の手に余るようなものは書かないことだが、それは初期設定(自分に書きやすい題材やキャラクターにする)の段階だけでなく、…

短歌ノート

箱庭 短歌は箱庭であると考える。限界のはっきりした空間に日本語(原則として)をレイアウトするのが短歌。この貧しさをまず自覚する。一生懸命辞書を引いてめずらしい言葉を見つけてきても、この貧しさを逃れることはできない。自分を錯覚させる効果しかな…

短歌日記

蝉時雨われらのひそひそ話から笑いが消えてなお蝉時雨

思い出地獄

おもに短歌と小説の練習のための日記です。というつもりで今日から始めます。 今までに私のつくった短歌は http://www.everydiary.com/diary.php?Name=ggippss にあります。 小説は http://cat.zero.ad.jp/gips/ から見れるページのあちこちに。