2006-01-01から1年間の記事一覧

瞼の下の本

もともと何ごとにおいても集中力のたりない私だから、本を読みながらでも、何かほかのことをすぐに考え始めてしまう。とくに、眠たいときはその「ほかのこと」が本に「書かれていること」と明確に区別して考える/読むことができなくなってしまい、頭の中で…

恐怖と自由

恐怖は我々の人生に居場所を広げる効果をもっている。 何を好き好んで「世界の発狂した部分」の幻影に付け狙われてみたがるのか。我々をこの世から突き落とそうとする殺人狂や、あの世へ引きずり込もうとする怨霊のドラマに夢中になるのかといえば、この世界…

ゴミ屋敷

私は何もかもすぐ忘れてしまう頭の持ち主であるが、それは一旦手に入れたものを確実に手放すからなのか。それとも、そもそも手に入れ損なっているのかが、わからない。どっちなのかが。 目の前にあるものを想像で「掴みとったつもり」になったことを、本当に…

短歌は移動

ええと、短歌はもうここには書きません。ここは読んだ本の感想とか自分で書いたみじかい小説とか、小説についての考え事が無意識に独り言になってポロポロこぼれてしまったのとかが書かれます。短歌はこれからは別のブログ(http://blog.goo.ne.jp/ggippss/…

墓地のある三角州から列をなし大破車両が繰り出す 春へ

廃屋でジャムを煮てくる出発は2時真夜中じゃないほうの2時

足跡が足をそろえて待っている 波に洗われているひまわり

ここは小説ですか?

今日はなぜか頭が痒いけれど頭を洗ってないから、痒いのではない。ちゃんとゆうべ頭を洗ったにもかかわらず痒いのだ。風が強いことと関係があるのかどうか、わからないが私は今日は一度も外に出てはいないのである。けれど窓をあけてバスマットを干したりは…

覗いてご覧

客観的に見れば私なんてかなり悲惨な状況にあるわけである。悲惨というのは不幸だとか失敗してるとかいうのではなく、不幸や失敗(あるいはその反対にある幸福や成功)が発生する圏内を遠く離れた穴の底に横たわって、だらしなく自足している状態。国民の義…

という、はなし

という、はなし吉田 篤弘文 / フジモト マサル絵 酔っ払ったら延々と意味のない話だけし続けたいタイプの私です。 こないだ新宿で朝まで酔っ払っていた帰り、電車の中でイラストレーターのフジモトマサルさんからもらった本。フジモトさんの絵に文章を付けて…

日記の書き方を忘れる

小説を書かなければいけないのである。だから今は小説の書き方についてかつて自分で思いついた限りのことを思い出し、そして書いている間じゅう忘れないようにしないといけない。それ以外のたとえば日記の書き方などは忘れてもいい、というより積極的に忘れ…

描写についてのメモ

前提としてたとえば、これはいい描写だなというものがあるとしますね。性描写であれ、風景描写であれ。そこにはイメージのふたつの層があり、ひとつはとうぜん、書かれている言葉がその場に作り出すイメージです。これをAとすると、同時に、その言葉が連れ…

風景について

書きたくないことは何も書かずに、好きなことだけを書いて小説を書くこと。 たとえば風景描写にしても、モデルになる現実の風景が存在するとか、設定上こういう風景ってことになっているとかいうつまらない理由で、書きたくもない風景を穴埋め問題でも解くみ…

小説を考える/考えてもらう

保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』から抜き書き。いろいろ大事なことが書いてあるんだけど、さがすのが面倒なので大事さの順位とは無関係に、ぱらぱらめくって目に止まったところからいくつか。 これは余談だが、カフカの小説は『審判』を読ん…

超怖Η全話ショートレビュー(6)完

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』全話に短い感想を書いていくシリーズ最終回。 廃社 何気なくつぶやいた「予言」が「的中」するまでに誤爆的に怪異をひきおこす話。にも深読みすれば読める(母親が口にした比喩と娘が目撃するあれの形状…

にんじんと馬

やっと小説を書き始めた。というか本当は別な書き出し部分を用意してさあ書くぞという体勢のままずっとほったらかしにしてあったのを、ようやく放棄して、今は新しい書き出しを前にあらためてイメージを膨らませているというのが正しい。 最初に用意してあっ…

小説の記憶喪失

私が長い小説(と感じるのはいわゆる掌編を除く短編以上=ほぼすべての小説のサイズなのだが)を書き上げるのを非常に苦手にしている――と言っても別に掌編なら中々のものだとか「インターネット作家」的夜郎自大を発揮したいわけではなく、単に掌編以上の小…

超怖Η全話ショートレビュー(5)

寒空の下の徹夜バイトから昼前に帰ってきて、眠くてたまらないのだがうまく眠れないまま日が暮れた。頭も体も全然使わない仕事な為疲労がきわめて局部的なものでしかなく、つまり24時間仕事らしい仕事もせずひたすら道端に突っ立ってたり、公園のベンチで震…

超怖Η全話ショートレビュー(4)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話に短く感想をつけるシリーズ。 前回一話分飛ばしていたので、今回はその話(「オーラ」)から。 オーラ 幼児語の意味を明かすタイムラグのさりげなさ。エッセイ風。 土いじり ガスメー…

文章の足場

文章というのは、そこに書かれていることだけを読むというわけにいかなくて、そこには書かれてないことも同時に読むことでようやく読むことができる。 そこに書かれてないこと、というのは読者の頭の中にあるもののことで、読者は目の前にある文章の余白を自…

お仕着せ

ひとつ前のエントリー(UHFで心霊ドラマ)はあらためて読み返してみると、内容的にちょっとどうかと思うところがある。内容的にというより表現的にというべきか。表現と内容は別々のものというわけではない。 何か表現物に接して「思わせぶりでないところ…

書ける気持ち、書きたい気持ち

今年の前半に小説の(脳内)締め切りが最低二つはある(ことになっている)のだが、いつものことながら書くことにいっこうに本気になれないというかエンジンがかからないというか、本気になったりエンジンをかけることをわざと避けてばかりいるかのようでさ…

UHFで心霊ドラマ

このあいだ帰宅するときふとアパートの屋根を見上げると、「あ、UHFのアンテナがあるぞ」と私は驚いた。うちのボロアパートにはUHFのアンテナがなかったはずなのである。少なくとも私がここに引っ越してきた十年前には、確実になかった。横浜から今の…

超怖Η全話ショートレビュー(3)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話レビュー三回目。 萌し 1ページ目に省略/圧縮されている情報量がさりげなく只事でない。平山節は内に視えないバロウズを飼っている。また返答に見える「うーん」の入り方の呼吸とか…

超怖Η全話ショートレビュー(2)

平山夢明編著『「超」怖い話Η』全話の感想。その二回目。 どんどん変に…… 平山怪談の定番話法にふいにおとずれる切断。必要最小限の言葉で(最小限ゆえ機械のように容赦なく)地獄のとば口まで運ばれる。 故障 「魂って上にあがっていくものでしょう」という…

お知らせ(短歌日記)

ポプラ社のWebマガジン、ポプラビーチの「日々短歌」の二月分に五首寄稿しています。 http://www.poplarbeech.com/ 「日々短歌」は毎月何人かの歌人の書き下ろし短歌が、日替わりでランダムに一首ずつ表示されるコーナーです。なので何日に私の歌が読めるの…

超怖Η全話ショートレビュー(1)

「超」怖い話シリーズの最新刊、平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(Ηはエッチじゃなくギリシャ文字でイータと読む)を田町のローソンで見つけたので購入。 ここ数年は半年ごとの刊行というハイペースが定着している。それでも次回は半年…

ブレーメン

近所の偉大なブックオフにてこないだは河井克夫『ブレーメン』を入手する。かつてガロ誌上で初出を読んだことのある作品も多いが、描線も作風も世界観も微妙に不安定に揺れ動きながらまるで歩いているうちに壁が曲がったり伸びたり消えたりしてかたちの変っ…

寺山サーチ

このところ「寺山修司+短歌」とかそれに似た検索ワードでここにくる人が以前より微妙に多い気がするんだけれど、何か寺山の短歌が話題になるようなことでも最近あったのかな世の中では。

若者たちへの伝言 屋上が踊り場の役目をはたしている建物の十三階で、私は今朝からひとりで暮らし始めている。踊り場は上空にうかぶ観音様のかたちをした屠場にいたる階段の中途にあって、だから窓の外を斜めに横切っている鉄製の階段には毎日牛を引いて博労…